彗星が生命誕生のきっかけとなった説、覆る可能性

彗星は塵と氷からできており、有機物も含んでいます。こうした組成を根拠に、科学者たちは彗星が地球の表面へ水や有機分子を運んだのではないかと考えてきました。一方、初期の地球に生命の構成要素を生む化学反応の原材料が十分にあったかは明らかではありません。

研究チームは、彗星の形成と進化に関する最新のモデルを使い、地球の初期に当たる期間を10万回シミュレーションしました。筆頭著者リチャード・アンスロー氏によると、初期地球の表面環境に関する知見に基づくシミュレーションでは、生命誕生につながるような衝突は一度も発生しませんでした。

有機分子の破壊と、残る稀な衝突の可能性

研究結果では、彗星の衝突速度が速すぎるため、壊れやすい有機分子は衝撃で破壊されてしまうとみられます。リチャード・アンスロー氏は、地球に衝突する彗星の一般的な速度を考えると、有機分子を壊さずに届けられた彗星は、あったとしてもごくわずかだろうと指摘しました。

リチャード・アンスロー氏は、成功した衝突が皆無だったとは断言できず、極めて稀に偶然の衝突があった可能性は残ると述べています。ただし、その衝突には液体の水や生命維持に必要な他の化学物質が揃う条件も必要で、条件がすべて重なることは考えにくいとしています。